木津川ものがたり その②

古代・中世にさかのぼる由緒を誇り、国宝・重要文化財を伝える寺々も多く、江戸時代になるころにいくつかの縁起絵巻が作られた。

今回地元の笠置寺・海住山寺・大智寺に伝わる絵巻が展示され、川崎大師平間寺所蔵の「蟹満寺縁起絵巻」が初公開されます。

それにちなんでのシンポジウムが加茂文化センターで開催され木津川管内河川レンジャーとNPO法人やましろ里山の会の活動報告があった後、奈良女子大学教授 千本英史氏・奈良博保存修理指導室長 谷口耕生氏・大阪大学大学院招聘研究員 中山一麿氏の講演が3本続き、パネルディスカッションがありました。

その後、無料シャトルバスで15分ほどの京都府立山城郷土資料館へ連れて行ってもらい、開館時間外ですが、特別に拝観させてもらい、加茂駅まで送っていただきました。

特別展の入場料250円で図録までいただきました。

館内では 資料館の伊藤太氏が特別展の展示品の説明をしてくださり、平常展示のコーナーでは、ボランティアガイドさんが時間外にも関わらず、丁寧に説明してくださいました。

ボランティアガイドさんは、土日には誰かが来ているのでお気軽に声をかけてくださいとのことです。

城陽市・阿弥陀寺のカヤの一木造の薬師如来立像や寺外初公開の木津川市・大智寺の十一面観音像(どちらも重文)が出品されています。

 

上↑ 阿弥陀寺 薬師如来立像

台座の蓮肉までカヤの一木から彫り出している。わずかに顔料が残り、もとは淡黄色を塗って壇像のように仕上げたらしい。翻波式衣文や量感のある体部、厳しい顔の表情など平安初期9Cの作風をよく示している。

明治の神仏分離以前まで枇杷庄天満宮の神宮寺役子院の本尊であった。

大智寺十一面観音立像。

頭体および両手部を含んで一木造の古式な構造え、唇の小さな優しげな表情とともに10世紀末製作の特徴を示している。

平常展に展示されているものの中では、

八幡市宝寿院の阿弥陀如来立像は、最近銘文が見つかり、修理の後、ここに寄託されている。ガイドさんの説明では、寺は無住で、無用心なので檀家の方から預かってほしいとのことで、ここに寄託されている。だから、今でも檀家の方がお参りに来られますということです。でも魂が抜いてあるそうです。

また、本物は京大にあるが、複製を展示している 城陽市久津川車塚古墳の長持形石棺 や珍しい木製のきぬがさの埴輪や木津川市松尾神社・牛頭天皇像が展示してあります。

絵巻について、ド素人なのですが、説明・解説が良かったので、縁起絵巻が作られた背景や貞慶上人の果たした役割など、少しは理解することができました。

解脱上人貞慶は、もと興福寺の僧で、その後、弥勒信仰を媒介として信仰を寄せていた笠置寺に隠遁し、笠置寺の寺観を整備、その後、海住山寺に移り住んだ。

興福寺北円堂の本尊も弥勒如来で、弥勒信仰が盛んで、笠置寺は、磨崖仏の巨大な弥勒仏を本尊とする寺で、現在は磨崖仏は風化しているが、貞慶がいたころは鮮やかだったようだ。

貞慶十三回忌に海住山寺本堂の補陀落山浄土図・十一面観音来迎図が描かれ供養された。

来年は貞慶没後800年で奈良博で企画展が計画中だそうです。楽しみです。

一方縁起絵巻は、お寺の寺格を上げるために江戸期にたくさん作られ、秘蔵されている例が多いが、布教に利用するため利用されている例も多い。

今と違って絵の具が簡単に手に入る時代ではないので、職業絵師が書いたそうだ。

 

ありがとうございました。

なお、「奈良女子大学図書館」でネット検索すると奈良の絵巻物などの画像がみることができます。